読書:『路地の教室』

合同合宿の往復+αで読了。本田由紀氏が新聞書評で紹介しており購入した。読みやすい良書。

いわゆる被差別部落の問題がテーマ。本書によれば、筆者自身も「路地」の出身者であり、差別に悩まされた。そのため、解放同盟などの社会運動にかかわってきたが、いまはそうした運動団体とは距離を置いて、独り取材を基本としているという。同和問題というと、「暴力団」などのイメージと重なり、怖い感じがして一歩距離をとってしまいそうだか、それはいわゆる似非同和。西日本ではいまだに結婚差別があるという。そのぶん、西日本の地域ではいくつかの運動団体の力も強く、同和対策事業に環境改善を目的とした税金が投入されている。

この本では差別問題の顕在化と、その問題点(生活条件が上がったことによる「特権」)にも視野を広げている。差別が格差を生む。格差是正の運動成果を享受するひともいる。まずは互いの理解からというのがメッセージのようだ。在日コリアンに関しても右派がたびたび言及する「特権」という言葉はあまり好きではない。しかし、筆者は「路地」における「特権」についても言及している。当事者でありながら、一定程度、運動とは距離感を置く。入門書としては最適かもしれない。
☆筆者が橋下徹の出自に関するルポで賞を取っているということは、この本を読んで初めて知った。

※追記:本田由紀氏が紹介した記事は『朝日新聞』2014年10月25日のようだ。ウェブ上で見ることができる。