『それでも夜は明ける』を見た

自宅で妻と見た。しんどい映画である。テーマはアメリカの奴隷制度。制度として人身売買が根付いている場合、奴隷は「商品」である。「商品」であるということは、所有権がある。映画ではたびたび「所有権を冒すな」という発言が出てくる。見ていてぎょっとするが、奴隷制度というものはそういうものだ。
これを見ていて考えたのは2つ。1つは、「所有権」というかかわりで、なぜか労働力の商品化を思い出した。いわずとしれたマルクスが『資本論』のなかで展開する労働力の商品化。これは、人身売買ではない。あくまで労働する能力、すなわち「労働力」を時間決めで販売しているんだよ、こういう説明が出てくる。翻ると、人身売買、奴隷制度はまさしく人間そのものの商品化。
2つ目は現代の日本の外国人労働者問題に非常に似ていると感じた点である。今年の成長戦略で、技能実習制度の拡充が閣議決定された。2015年以降、技能実習制度は現行3年の滞在期間を2年間延長する。職業選択の自由はない。米国の国務省からは「人身売買」であると批判されている(日本語訳)。映画の中で、良心的な奴隷主も出てくる。たしかにいい人や、悪い人はいる。問題は制度そのものにどっぷりつかると、その問題性への認識がマヒしてくる点である。日本の実習生制度も、それを利用する悪い人、いい人はいるが、制度上の問題点は、非常に奴隷制度と親和性がある。そのことを考えた。
映画としては、救いようがない。後味はとてもよくない。だが、考えさせられる映画ではある。