読書:『「悪」と闘う』
- 作者: 宇都宮健児
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
- 発売日: 2014/08/08
- メディア: 新書
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この本は、宇都宮弁護士の半世紀を振り返りながら、社会問題に対して、弁護士としてどのようにアプローチしてきたかを明らかにしている。彼個人の魅力もさることながら、貧困問題や労働問題に対して、いかにして法律を組み込むか、という点での社会運動論でもある。私は、社会運動論として興味深く読んだ。
例えば、サラ金問題に対して、消費者金融を規制する法律を作るとき、共産党や社民党などこの種の問題に理解のある政党にのみアプローチしていては、実際に法律にすることはできない。問題は、自民党や公明党など与党の議員にサラ金問題を理解してもらい、いかに具体的に立法化できるかである。
この本では、地方議員が地元の弁護士会の会長クラスに陳情を受けると、その問題を認識し、支持をしてくれることが多いこと、そうしたことを実感として掴み、立法化するために戦略的にそれを採用したとも書いてある。自民党が新自由主義政党として一枚岩ではなく、とくに「小泉チルドレン」など新人議員には話を聞いてもらう余地があるという説明もある。とても面白い。
いかにして社会に貢献するのか、何を軸に自分が仕事をするのか、相対立する見解にいかに理解をしてもらうのか、幅い広いテーマを扱いつつ、読者を飽きさせない。彼はやっぱり東京都知事など政治家としての仕事をしてもらうことが必要かもしれない。それは社会運動の力を背景にしているからである。読み応えのある良書。