読書:『オランダ 寛容の国の改革と模索』

オランダ 寛容の国の改革と模索 (寺子屋新書)

オランダ 寛容の国の改革と模索 (寺子屋新書)

NY行きの飛行機内と滞在先にて読了。オランダの社会構造を、主として文化、教育、多文化共生などについて論じた本。パートタイム労働社会、ワークシェアリングなど経済社会を念頭に置いて読むと、そこらへんの記述は驚くべきほど少ないことに気づく。ただし、オランダが住宅整備を計画的に行っていることや、自動車の乗り入れを制限し自転車中心の生活に転換していること、などは日本と比較すると学ぶべき点が多いように思われる。また、イスラム社会のイスラム教徒が多く住むオランダ社会において、彼らを外様としてではなく、文化や生活様式を含めて共生を進めようという姿勢には好感が持てる。もっとも、9.11以降、排外主義的な政治運動も増えていることも指摘している。政治経済構造について踏み込んでほしかったが、教育学者と文化人類学者の共著ということなので、その点は仕方がない。ちなみに筆者の一人である見原礼子さんは、長崎大学の教員。『オランダとベルギーのイスラーム教育』という本を2009年に出されている。