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青春の門(第二部)自立篇(講談社文庫)

青春の門(第二部)自立篇(講談社文庫)

ようやく読了。伊吹信介が東京の大学(早稲田大学?)に通い、一人暮らしを始める。幼馴染の織江と会ったり、新宿2丁目の風俗店のカオルと知りあったり、はたまた体育局講師のボクシング部を指導する石井とゆえあって生活したりする。生活するために演劇部の緒方(緒方は農民と連携するために地方に出向いたりする活動家である)と同居したり、輸血のバイトをしたりと全く勉強などできない。そんなドタバタが描かれている。

カオルのお店にはお金を借りるためにマルクス・エンゲルス全集やドストエフスキーの著作が並べられている。いなか娘よりもインテリの女性にひかれる信介。でも自分は全く勉強していないことからの劣等感。筑豊地域から都心部へ出てきて変化する主人公の気持ちが初々しい。東京に出た日に、泊るところがなく、大学に泊まろうとすると守衛に追い出される。「学校なのに居場所がない」と嘆く信介。大学に入学したら、何をしようかわくわくしながら、どうしていいのかわからない。結局のところ遊び呆けてしまい、自暴自棄になる。誰しもが体験するストーリーである。でも、信介しゃん、周囲のありとあらゆる女性に興味持ち過ぎ…。

ところで気になる点がある。緒方とのやり取りで大学には学費を納めていないと「中退」にもならず、「抹籍」になるとの話題が出てくる。著者の五木は早稲田大学を「抹籍」された(のちに学費を納めて「中退」)そうだ。「青春の門」はどこまで五木本人の体験を再現していて、どこからがフィクションなのだろうか。