ハゲタカ
9時間ほどぐっすり眠る。午前中からトリダメしておいたNHKドラマ「ハゲタカ」を見る。
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誰かが言った・・・人生の悲劇は2つしかない。ひとつは金のない悲劇。そしてもうひとつは金のある悲劇。世の中は金だ。金が悲劇を生む。
ドラマの冒頭でたびたび登場するファンドマネージャー鷲津の言葉である。
オープンキャンパス前日に何気なくテレビをつけると5話がやっていて、連続で6話もみてしまう。就寝は2時過ぎ。観る前のイメージは、2005年前後のM&A買収やライブドア事件にからむ現象を描いた、いわば「はやりもの」にすぎないとの否定的なものだったが、見ているうちに完全にそのイメージは覆された。銀行エリートと投資ファンドの2人の主人公をめぐって、98年前後からの日本経済の構造不況と企業買収の騒動、そして新しい日本的経営の移行劇をかなり意識して描写がされている。何より主人公のお二人(柴田恭兵、大森南朋)の演技がすばらしく、ストーリーとして飽きない。
日本経済論や経済学に関わりのあるテーマをあげると、日本的経営(終身雇用、年功賃金)、コーポレートガバナンス、株式相互持合い、メインバンクシステム、外資企業、企業買収、株主総会、株主価値最大化などその中身は尽きない。日本経済論の講義の補足資料として使えそうである。その時代を学生時代からリアルタイムにすごした人間としては、旧来の日本的経営をどう乗り越えるか、という世論の意識が投影されていてとても興味深い。
3話は、家族経営でワンマンの女性社長が実権を握るおもちゃ会社が外資ファンドに狙われるというテーマである。同族企業による企業の私物化が問題となっており、それに対してファンドは経営の効率化を図るため、債権を買い集め、おもちゃ会社の最大の債権者となることで、女性経営者の罷免を要求する。これはフジテレビの買収をめぐるライブドアの応酬(とそれに続く村上ファンド)にかなりイメージが近い。当時、フジテレビの旧態依然とした経営に嫌気がさしていた人々のなかには、ライブドアの登場に一種の爽快さを感じた人は少なくないはずだ。ホリエモンが日本経済を救う救世主なのではないか!という期待と不安が両立するイメージである。ハゲタカでもファンドマネージャーは同じような位置づけで描かれている。私自身はこのようなファンドマネージャーの描写には問題があると考えるが、それでも日本経済の最近の動向をイメージとして理解するのには役立つだろう。