介護労働

少人数制の授業で学生と一緒にビデオを見る。あわせて自分自身理解を深めるために、町田隆男氏の「介護労働と介護問題」(『日本労働年鑑78集』2008年所収)を読む。平易な言葉で実態と背景、制度的問題点が論じられている。一番有益だったのは、介護職の賃金カーブが年功的に運用されず、事実上フラットにしかならない現状である。その他の福祉の仕事であれば、年齢、経験とともに技能が積み重ね、賃金も上がるのであるが、介護職は40代になっても驚くほどあがらない。

「賃金センサス」によれば「福祉施設介護員」の所得は、経験年数ゼロでも214.9万円(男)、196.0万円(女)であるのに対し、15年以上経験しても297.0万円(男)、247.1万円(女)、いずれも年収300万円に達しない。これでは、人材が離れていくのは当然である。専門性を持つ仕事は技能や経験に応じて賃金は上がるべきだし、それが社会的に評価されることが、男性であれ女性であれ望ましい。それゆえ、経験別の賃金カーブが社会的に正当化されるひとつの理由を介護職のフラット型賃金カーブは示している。

その他介護労働の位置づけについても町田氏の視点は鋭かった。本来であれば「専門性」を持つべき生活(者)支援のための介護の仕事が、実際には「オムツ交換型」の単純作業に変わることで、低賃金が正当化されるとの指摘は納得させられる。

介護保険を問いなおす (ちくま新書)

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関連書籍として伊藤周平氏の制度紹介。こちらはまだ読んでいない。