岩佐卓也『現代ドイツの労働協約』法律文化社、2015年/西村純『スウェーデンの賃金決定システム』ミネルヴァ書房、2014年。

学会参加するために事前に読んだ2冊。『現代ドイツの労働協約』は協約カバー率低下の下でいかに組合が対抗軸を張っているのかを示す労作。労使関係の緻密な研究書で、単なる制度論に陥らないところが素晴らしい。時間軸を設けることで労組と経営側のせめぎあ…

渋谷龍一『女性活躍「不可能」社会』旬報社、2016年。

渋谷龍一『女性活躍「不可能」社会』旬報社、2016年。主婦パートは「家計補助型だから深刻な問題ではない」とする議論に真っ向から反論。低賃金を容認する差別構造に目を向ける。丸子警報器事件の当事者が、いかに立ち上がり、正社員労働組合と共同してきた…

今野晴貴『ブラックバイト 学生が危ない』岩波新書、2016年。

今野晴貴『ブラックバイト 学生が危ない』岩波新書、2016年。学生アルバイトの「基幹労働力化」の現状を鋭く描く。コンビニに代表されるフランチャイズ経営の広がりで、本店、店長、アルバイトの重層構造が形成されている点も指摘。「やりがいの搾取」とは質…

范立君『現代中国の中小企業金融』時潮社、2013年。

中国は2000年代以降、改革開放の流れの中で中小企業に注目が集まる。伝統的な国有金融機関では抵当条件も厳しく、融資が行き届かない。そこで伝統的な中国の血縁関係を維持しつつ、ネットワーク関係を構築したのが福元通運モデル。本書ではこの点に着目して…

浦野広明『税が拡げる格差と貧困』あけび書房、2016年。

浦野広明『税が拡げる格差と貧困』あけび書房、2016年。租税原理の応益負担の問題点を分析し、応能負担こそ憲法に定められた人権保障の具体化であると説く。消費税など間接税が小規模事業所に極端に不利であることを具体的な数字例を用いて説明している。税…

牧野富夫編『アベノミクス崩壊』新日本出版社、2016年。

牧野富夫編『アベノミクス崩壊』新日本出版社、2016年。労働政策、国際関係、金融政策の各論でアベノミクスの3年間を分析する。憲法改正という安倍首相の悲願と経済の軍事化が同時進行している事態に対し、経団連等大企業がどう考えているのか気になった。経…

山元浩二『小さな会社は人事評価制度で人を育てなさい!改訂版』中経出版、2014年。

山元浩二『小さな会社は人事評価制度で人を育てなさい!改訂版』中経出版、2014年。人事コンサルタントによる中小企業向けの人事の指南書。中小企業こそ成果主義を廃棄すべきととき、人材育成の観点から主観性を排除する人事考課の仕組みを考察する。かなり…

岩渕健輔『日本ラグビー論』ベースボールマガジン社、2016年。

リオオリンピックでのラグビーセブンス日本代表の活躍に触発されて読んだ。筆者はラグビー日本協会のGM(ジェネラルマネージャー)。ヘッドコーチが担うスキルコーチングを担うのではなく、強豪国とのマッチングや、サンウルブスの新たな参戦など、主にチー…

原冨悟『公契約条例ハンドブック』新日本出版社、2013年。

筆者は埼玉労連の元議長。自治体発注の仕事が価格競争に巻き込まれにくい総合評価方式の利点をあげる。公務員の賃金水準をベースとし、地域産業の引き上げをはかる。やっぱり労働組合運動と地域運動の接点をつくる、これがメッセージか。公契約条例ハンドブ…

岡田知宏・秋山いつき『災害の時代に立ち向かう』自治体研究社、2016年。

岡田知宏・秋山いつき『災害の時代に立ち向かう』自治体研究社、2016年。復興支援に伴う中小企業家同友会や民主商工会の役割を報告する本。印象的だったのは官公需適格組合の活用。競争入札ではなく中小企業の共同受注者を重視する。地域経済における中小企…

伊藤和子『ファストファッションはなぜ安い?』コモンズ、2016年。

バングラデシュでの工場事故やファストリテイリングの下請工場の過重労働についての記述が中心的。NGOによるルポルタージュに近いが、構造的な視点に目を向けられるとなおよし。ファストファッションはなぜ安い?作者: 伊藤和子出版社/メーカー: コモンズ発売…

渡部あさみ『時間を取り戻す』旬報社、2016年。

若手研究者による労働時間分析。労働時間管理に関するサーベイが中心。終盤に出てくる組合が関与して労働時間削減に成功した事例を詳しく展開して欲しかった。学部生にはよいかも。時間を取り戻す 長時間労働を変える人事労務管理作者: 渡部あさみ出版社/メ…

菅野完『日本会議の研究』扶桑社新書、2016年。

話題の新書『日本会議の研究』扶桑社新書を読んだ。安倍政権が人脈的に日本会議とつながりがあるという点のみならず、数人のリーダー層をさぐりあて、彼らの原点が長崎大学の学園正常化闘争にあること、新興宗教「生長の家」の幹部であったことなどを明らか…

室井尚『文系学部解体』角川新書、2015年。

室井尚『文系学部解体』角川新書、2015年。横浜国立大の教育・大学改革のなかで書類仕事がふえ、学生との共同の学びの場所が失われてきたことを鋭く指摘する。痛快な文体。大学関係者は頷くところが多いだろう。文系学部解体 (角川新書)作者: 室井尚出版社/…

石井穣『古典派経済学における資本蓄積と貧困』青木書店、2012年。

古典派経済学における資本蓄積と貧困―リカードウ・バートン・マルクス作者: 石井穰出版社/メーカー: 青木書店発売日: 2012/04メディア: 単行本 クリック: 1回この商品を含むブログを見る いまどき、古典派経済学の学説史的検討なんてはやらない。一昔前であ…

長田華子『990円のジーンズがつくられるのはなぜ?』合同出版、2016年。

バングラデシュの社会経済に関する記述が読ませる。農村部の女性が出稼ぎとして縫製工場で働くのも、そのプロセスで工業労働に馴れていくことも、中国と同じ。前半はバングラデシュの社会事情、中盤が多国籍アパレル企業分析、終盤がCSRやディーセントワーク…

深見浩一郎『<税金逃れ>の衝撃』講談社新書、2015年。

税理士によるグローバル税制分析。勤労所得を軽く、金融所得を重く、という提案がユニーク。ピケティも触れていた米国外国口座税務コンプライアンス法(FATCA)も出てくる。Googleの租税回避の手法も紹介され勉強になる。の衝撃 国家を蝕む脱法者たち (講談…

松尾匡『この経済政策が民主主義を救う』大月書店、2016年。

安部政権に対峙するリベラル左派こそ、金融緩和による財政出動を支持するべきだと説く本。全体として筆者の立場はケインジアンに近い印象を受ける。本書では、欧州の左派は緊縮財政に反対し、金融緩和も支持するのが一般的と説明されている。しかしグローバ…

中野円佳『「育休世代」のジレンマ』光文社新書、2014年。

筆者は元新聞記者。大学院に進学してワークライフバランス問題を研究する。出産前に仕事をしていた女性へのインタビューに基づき、いかなる要因が就業継続/断念を決定づけたのか、丹念に分析している。様々なケースが紹介されているので、自身がどのようなパ…

水島朝穂『はじめての憲法教室――立憲主義の基本から考える』集英社新書、2013年。

早稲田大学のゼミ生との対談形式で進む。集団的自衛権の閣議決定がなされる前だが、自衛隊と9条の関係をどう考えるのかという問題から、自民党の憲法改正案まで幅広い論点をカバーしている。橋下維新の会の台頭などを念頭に「決められる政治」をあおる風潮を…

『だるまちゃんとてんぐちゃん』

だるまちゃんとてんぐちゃん作者: 加古里子出版社/メーカー: 福音館書店発売日: 1967/11/20メディア: 単行本購入: 4人 クリック: 61回この商品を含むブログ (146件) を見るだるまちゃんがかわいい。てんぐちゃんの様子を見ながら、真似をする。下駄がほしい…

三浦まり『私たちの声を議会へ――代表制民主主義の再生』岩波書店、2015年。

私たちの声を議会へ――代表制民主主義の再生 (岩波現代全書)作者: 三浦まり出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2015/11/19メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (6件) を見る代表制民主主義の機能不全とも呼べる現状に対して、どのようにした…

『“東洋の神秘"ザ・グレート・カブキ自伝』辰巳出版、2014年。

“東洋の神秘"ザ・グレート・カブキ自伝 (G SPIRITS BOOK)作者: ザ・グレート・カブキ出版社/メーカー: 辰巳出版発売日: 2014/10/29メディア: 単行本この商品を含むブログ (4件) を見るグレート・カブキ。米国で活躍した元祖ペイントレスラーである。毒霧をは…

しろくまちゃんのほっとけーき

しろくまちゃんのほっとけーき (こぐまちゃんえほん)作者: わかやまけん出版社/メーカー: こぐま社発売日: 1972/10/15メディア: ハードカバー購入: 11人 クリック: 207回この商品を含むブログ (256件) を見る絵本シリーズ第二段。「わたしほっとけーきつくっ…

なっとうぼうや

なっとうぼうや 学研おはなし絵本作者: わたなべあや出版社/メーカー: 学研プラス発売日: 2012/12/18メディア: Kindle版この商品を含むブログを見る上の子どもが以前、納豆を良く食べていた。それこそ毎日のように。食べ過ぎて飽きたのか、今は食べていない…

篠原健一『アメリカの自動車産業』中公新書、2014年。

アメリカ自動車産業 (中公新書)作者: 篠原健一出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 2014/07/24メディア: ペーパーバックこの商品を含むブログ (5件) を見る 米国の自動車産業の専門家による米国の労働組合の分析。ジョブコントロールユニオニズムの実践を…

読書:萩原伸次郎『オバマの経済政策とアベノミクス』学習の友社、2015年。

オバマの経済政策とアベノミクス―日米の経済政策はなぜこうも違うのか作者: 萩原伸次郎出版社/メーカー: 学習の友社発売日: 2015/05/15メディア: 単行本この商品を含むブログを見る萩原伸次郎氏は長年、米国経済白書を翻訳してきたことで知られる。いわばア…

SEALDs編著『民主主義ってこれだ!』大月書店、2015年。

SEALDs 民主主義ってこれだ!作者: SEALDs(自由と民主主義のための学生緊急行動)出版社/メーカー: 大月書店発売日: 2015/10/21メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (14件) を見るSEALDs関係書籍の2冊目。河出書房の内容は、基本的に対談形…

Number臨時増刊号

Number 特別増刊「桜の凱歌」エディー・ジャパンW杯戦記 (Sports Graphic Number(スポーツ・グラフィック ナンバー))出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2015/10/16メディア: 雑誌この商品を含むブログ (3件) を見る2015年ラグビーワールドカップは過去最高の…

高橋源一郎・SEALDs『民主主義ってなんだ?』河出書房新社、2015年。

民主主義ってなんだ?作者: 高橋源一郎,SEALDs出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2015/09/18メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (23件) を見る戦争法案(安保法案)をめぐって戦後まれに見る反対運動が展開された2015年。6月上旬に与…