労使関係論と経営学
「古くからの労使関係論が経営管理をいかに規制するのかを重要な研究テーマの1つとしていたといってよいならば、経営管理を規制対象としない協調的労使関係についての研究は、経営学そのものに近接する」
「ダンロップ労使関係論から出発して経営学に到着するのは、労使関係論の衰退の1つの姿であると遠藤は思う」
遠藤公嗣(2012)「新しい労働社会組織の意義」『個人加盟ユニオンと労働NPO』ミネルヴァ書房。
個人加盟ユニオンと労働NPO―排除された労働者の権利擁護 (現代社会政策のフロンティア)
- 作者: 遠藤公嗣
- 出版社/メーカー: ミネルヴァ書房
- 発売日: 2012/06
- メディア: 単行本
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社会政策系の労働研究(いわば制度派労働研究)、経営学の一分野としての人的資源管理、競争優位の分析手段としての広義の経営学。これらは、労使関係、組織関係、生産管理など、それらが分析対象とする事象はほぼ重なる。ただし、前提となる課題設定が異なる。先の指摘はそのことを端的に表している。
研究をつなげる
学会の会議それ自体は、通常の仕事と同じだけれど、そこで知り合った先生方と話をしたり、議論をするきっかけになることがある。名前は聞いたことあっても、読んだことのない研究者の論文などを、俄然読みたくなる。近い分野だとなおさら。
知人であっても、よほど問題意識が近いか、その方の問題意識を理解していないと、論文を読むこと少ない。それが、ひょんなことからつながって直接論文読んだりする。あの人、こんなよい論文書いてたんだとなる。こんなことがわかったときは、密かに嬉しい。
世の中には埋もれそうになる多数の研究があって、最新の研究が成り立つ。たとえ、目立たない研究でも、確実に足跡は残っている。前に踏み入れた場所と、そこでの息吹がみえる。ああ、あの人はここで、闘っていたのか。こんなところで、格闘しているんだ。それがわかると、自分が置かれた位置もはっきりとつかめる。
郝仁編『ストする中国』彩流社、2018年
郝仁(ハオレン)編『ストする中国』彩流社、2018年。2010年以降頻出する中国工場におけるストライキの主体にインタビューし、その内容を記録したもの。賃下げ、労働条件引き上げ、2つのパタンに整理している。
最低賃金の引き上げに対し、福利厚生を引き下げる。物価上昇に対して、賃上げが少ない。食堂のご飯がまずい、虫が入っている。カップラーメンのお湯代金を天引きするのは、やめてほしい。労働者の不満は、例えばこのようなもの。
ストライキの主体になるのは、職場で信頼があり、技能も相対的に高い労働者。そもそも農民工など地方出身者に労働者としての権利はほとんどない。だからこそ、ストライキという手段に訴える。東莞(ドンガン)や香港などで起こっている事実が生々しく語られる。
明治大学の石井知章教授の解説。2000年代以降のストライキは、国営企業のリストラへの対抗など、官製主導の労働組合とは異なる。工会加盟の正規労働者以外の、農民工なの反発。上からではなく、下から持ち上がったことが特徴。石井氏は新たなストライキの動向を、中国における個別的労使関係から、集団的労使関係への変化と捉えている。あるいは、中国労使関係の市場化とも呼んでいる。
本書を読むと、正規労働者と非正規労働者の利害関係の違い、それに対する労働組合の役割などは、日本の雇用形態格差と似ている側面があることがわかる。ただし、中国の場合は、官製労働組合以外は法的に認められていない。農民工の利害が反映される、そのような場所として、労働組合のうねりができるのか、重要な課題である。
企業内の交渉主体として認める。労働条件引き上げの対象として、対等のパートナーとみる。日系企業も含めた外資経営者が、農民工をそのように認識しなければ、高い離職率は変わらないのではないか。そのように感じた。
古田敦也のプロ野球ベストゲーム「盟主を射止めた情報戦 1987年西武対巨人」(2019年2月1日再放送)
再放送。たまたまBSで放送中のものをみる。駒田、中畑、クロマティなど強打の巨人。チーム打率も、防御率もリーグ1位。下馬評では、巨人有利。これに西武はどう対応するのか。
西武は負けた一戦目で、ジャイアンツの癖を掴む。早い段階で攻める駒田には、最初から勝負玉。ペースをつかませない。一戦目打率八割の駒田は、以後、低迷する。東尾は一戦目の課題を反省会で伝える。
二回目の登板で、中畑には得意の内角は投げない。外角攻めで封印する。中畑、駒田が抑えられることで、巨人のつながりは分断される。
機動力野球のライオンズ。伊原コーチは巨人の癖を掴む。走る野球に活かす。徹底したバンド戦略。すべての選手がランニングとバンド練習。日本シリーズでは、ランナーが一塁に進出すると、必ずバンド。手堅くセカンドおくる。
伊原の分析。クロマティの山なり返球にチャンスをみる。二塁にランナー清原。タッチアップで生還。偶然ではなく、計算。清原の走塁ミスもあり、巨人に戦略気づかれず。
一塁ランナー辻。秋山がセンター前ヒット。クロマティわずかにもたつく。中継に入ったショート川相はバッターの秋山をみている。バッターランナーのセカンド進塁を警戒する。三塁コーチの伊原は、クロマティのもたつき、河相の視線をみた瞬間に、辻にホームランニングを指示する。あわてて川相は、ホーム送球するが、間に合わず。わずが0.9秒のすきを見逃さない。
こうして2年連続日本一に輝く西武。ランニングの重要性。打たれて負けたのではなく、すきで負ける。あんなことはこれまで起こらなかった。プロ野球の歴史をかえた一戦。これらは解説の古田氏の言葉。
黄金時代のライオンズ。自分が好きだったころのライオンズ。秋山、清原など名選手もいるが、森監督のやり方が好きだった。巨人の選手も水野、槇原、吉村、など懐かしい選手ばかり。面白い番組だった。
ハーヴェイの中国経済分析
ハーヴェイの新自由主義、中国の章を読んだ。あらためて読むと、沿岸部の発展、鄧小平の南巡講話、資産バブルの発生など時系列によく整理されている。支配政党(中国共産党)とローカル権力者が癒着するというのも米国と同じと捉えている。10年以上前の分析だが、さすがという印象をもった。
- 作者: デヴィッドハーヴェイ,David Harvey,渡辺治,森田成也,木下ちがや,大屋定晴,中村好孝
- 出版社/メーカー: 作品社
- 発売日: 2007/02/01
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